リハビリ何でも屋

理学療法士がリハ栄養やリハビリのことについて解説していくブログ。少しでも皆様のお力になれれば。

低栄養患者に対する栄養量設定までの流れについて

低栄養患者さんにリハビリを実施する時、やみくもに高負荷な運動を設定してしまうと、かえって筋肉量を減少させてしまう危険性があります。

 

過去記事↓

rehabilitation-nutrition.hatenablog.com

 

適切な負荷量を設定するためには、どのように栄養量を設定しているのかを知っておくことも必要です。

今回は、栄養量設定までの流れについてまとめていこうと思います。

 

 

体重増減の基本

体重増減の基本

まず、体重増減の基本についてお話しします。

人間は生命を維持するため、また何らかの活動を行うために、エネルギーが必要です。これらのエネルギーをエネルギー消費量と言います。

体内に蓄積しているエネルギーには限りがあり、消費されるエネルギーを補填するため、一定量のエネルギーを体内に取り込まなければいけません。取り込むエネルギーのことをエネルギー摂取量といいます。

体重の増減には、このエネルギー消費量と摂取量のバランスが関わっています。エネルギー消費量が摂取量より多ければ体重は減少し、逆であれば体重は増加、消費と摂取のバランスが保たれていれば体重は維持される、ということになります。

 

低栄養の指標の一つに体重減少がありますが、これは何らかの原因で「エネルギー消費量が摂取量より多い」状態ということです。原因としては

・エネルギー摂取量が不足している(飢餓)

・急性炎症による異化亢進(侵襲)

・慢性、進行性疾患のによる炎症反応(悪液質)

・活動係数の増加

などが考えられます。運動負荷量も活動係数に計算されるため、「筋力強化目的で負荷量かけているのに、筋肉量や体重が減少してしまっている」などの場合は負荷量を見直す必要があります。

 

栄養量設定の流れ

目標体重を決め、1日あたりのエネルギ蓄積量算出、総エネルギー消費量算出し、総エネルギー必要量を算出。それらを比較してエネルギー摂取量が適正か判断する。

栄養量設定の流れ

 それでは、患者さんの栄養量設定までの流れを把握していきたいと思います。

 

目標体重を決める

まず目標体重を決めるところから始めます。低栄養状態で体重を増やしたい場合は、単純に「体重増加」ではなく、「1ヶ月後に1kgの増加」など、具体的な目標を決めます。1kgの増加を図るには、約7000kcalの付加が必要、というところがわかります。

 

1日あたりのエネルギー蓄積量算出

次に、1日あたりに必要なエネルギー蓄積量を算出します。上記の場合、1ヶ月に7000kcalの付加が必要であるため、1日あたり約233kcalのエネルギー付加が必要ということになります。

 

総エネルギー消費量(TEE)算出

次は、総エネルギー消費量(TEE)を算出します。TEEは、

基礎代謝(BEE) × 活動係数 × ストレス係数

で計算することができます。

 

詳しくはこちら↓ 

rehabilitation-nutrition.hatenablog.com

 

これで、1日にどれくらいのエネルギーが消費されているかがわかります。

 

総エネルギー必要量算出

1日あたりのエネルギー蓄積量、総エネルギー消費量の数値が出たところで、1日に必要なエネルギー摂取量=総エネルギー必要量を算出します。

これは、

総エネルギー消費量(TEE) + 1日あたりのエネルギー蓄積量

で計算することができます。

 

エネルギー摂取量と総エネルギー必要量を比較

最後に、実際に1日に食べている量(エネルギー摂取量)と総エネルギー必要量を比較します。

これがイコールであれば目標体重に向けて適切に摂取できているということです。

もしエネルギー摂取量が必要量より少ないのであれば、目標体重に向けた栄養量に足りていないということなので、活動係数(運動負荷量や日常での活動量)の見直し、ストレス係数の影響の有無などを調べ、再調整していくといった流れになります。

 

最後に:うまくいかない栄養管理

机上ではこのように考えることができるのですが、現場ではなかなかうまくいかないことも多いです。一般的に1kgのカロリーは7000kcalと言われていますが、高齢者では8800〜22600kcalが必要とも言われており、その振れ幅からモニタリング時には体重増加が見込めてないこともよくあります。また、患者さんの食の趣向や食べられる量の限界など、必要な数字は出せても摂取してもらうのは難しいことがあります。

栄養補助剤やMCTオイルなど、さまざまな工夫を凝らしながら栄養士さんはカロリーを調整してくれています。

理学療法士も患者さんの効率の良い改善に向けて、身体面の観点から協力していきたいですね。

 

本日は以上です、ありがとうございました。

 

低栄養に関する過去記事↓

 

rehabilitation-nutrition.hatenablog.com

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