リハビリ何でも屋

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高齢者の転倒原因、転倒しやすい動作とは?

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厚生労働省の調査によると、高齢者における転倒・転落は、支援が必要になる原因の第4位であり(12.1%)、転倒を起因とした生活障害が多いことがわかります。また、転倒・転落が原因の死亡者は年間8000人と言われ、交通事故による死亡者の1.5倍になります。身近に起こりやすいアクシデントとして、理学療法士が転倒予防介入をすることも多いと思います。

 

今回は高齢者における転倒要因と、転倒しやすい動作についてまとめようと思います。

 

 

地域高齢者の30%が年間1回以上の転倒を経験している

このような話はよく耳にすることが多いと思います。複数の研究報告で、約30%の地域在住高齢者が年間1回以上の転倒を経験しているとされています。

よく「地域在住高齢者」と一括りにされることが多いですが、実際にはその高齢者の機能レベルによって、転倒率は変化しています。

高齢者の転倒率 機能レベルによって変化する

比較的元気な高齢者の転倒率は約20%ですが、軽度機能低下になると約30%、虚弱となると約50%の転倒率と大きく異なっていきます。

したがって、「高齢者だから」とまとめるのではなく、個人の機能レベルを把握して転倒リスクを考えていく必要があります。

 

転倒者の内訳

また、転倒した者のうち60%は軽度〜重度の外傷を負います。その外傷を負った者のうち10%は骨折を伴い、その25%は大腿骨近位部骨折であると言われています。

外傷がない者に関しても、転倒恐怖感が発生することによる活動量の低下や、うつ症状といった転倒後症候群を発症し、ADLの低下をきたすことがあり、転倒というアクシデントだけで、その後の生活に影響することがあります。

 

 

*転倒恐怖心の評価
転倒恐怖心に対する確立した評価方法はないため、一般的な問診で聴取していく。「転倒に対する不安は大きいですか」「転倒に対して恐怖心を感じますか」のような簡単な質問で良い。転倒恐怖がある場合、原因や状況を精査し、対策を行うことで過剰な転倒恐怖からくる活動性低下を予防できる可能性がある。

 

転倒発生時の動作

では、転倒しやすい動作はどのような動作なのでしょうか。

転倒しやすい動作と転倒の原因に関しても、高齢者の機能レベルで異なります。したがって、地域在住高齢者と施設入所高齢者とで変わっていきます。

転倒発生時の動作

転倒しやすい動作において、地域在住高齢者では歩行が56%と約半分を占め、階段昇降、立ち座りと続きます。対して施設入所高齢者では、歩行は31%、次に立ち座り、立位の順になっています。この差については、そもそも移動能力・身体能力が低下していることが原因と考えられます。

 

転倒の原因

転倒の原因

転倒の原因において、地域在住高齢者ではつまずきが最も多く、ついですべり、めまい、バランスの崩れと続きます。対して施設入所高齢者では、バランスの崩れが最も多く、ついでつまずき、衝突、すべりと続きます。この差の理由として、施設入所高齢者は移動能力が低下しているため、立位姿勢など静的な場面での転倒が多くなっていると考えられます。

 

最後に

今回は高齢者の転倒原因、転倒しやすい動作について書きました。個人の機能レベルに合わせて、転倒予防に向けたプログラムをしっかり組んでいきたいですね。

 

本日は以上です、ありがとうございました。

 

参考:高齢者理学療法