リハビリ何でも屋

理学療法士がリハ栄養やリハビリのことについて解説していくブログ。少しでも皆様のお力になれれば。

転倒リスクのスクリーニング、評価について

 高齢者の転倒は、様々な因子が影響して起こります。そのリスク因子を評価して、転倒が起こらないように働きかけていくのが理学療法士の仕事の一つです。

 

転倒に関する過去記事はこちら↓

rehabilitation-nutrition.hatenablog.com

 

今回は、転倒リスクのスクリーニング、評価の考え方についてまとめていきたいと思います。 

 

 

転倒リスクのスクリーニング

転倒リスクのある患者に対して適切に対処していくためには、転倒リスクのスクリーニングを行い該当者を絞り出す必要性があります。転倒リスクのスクリーニングは、米国老年理学療法学会の臨床指導声明が参考になります。

 

転倒リスクのスクリーニング(米国老年理学療法学会、臨床指導声明)



このフローチャートでは、まずは高齢者が来た段階で、過去12カ月間の転倒の有無、または、バランスと歩行における困難さの有無を問診で確認し、同時にバランスと移動能力障害の観察を行います。 
問診でありと答えた場合、さらにバランスと移動能力のスクリーニングを行い、その結果陽性の場合はさらに詳細な評価を実施していきます。

 

転倒リスクを予測するためのカットオフ値 



 バランスや移動能力のスクリーニングは、よく使われるものとして片脚立位保持時間、FR-T、TUGなどがあります。これらのカットオフ値を参考としてスクリーニングしていきます。

 

転倒リスクの評価

スクリーニングで陽性となった高齢者には、多因子評価を実施して転倒のリスク因子を探る作業を行います。リスク因子は機能面から生活環境まで多岐にわたります。この場合、国際生活機能分類ICF)に沿ってカテゴライズすることで分かりやすくなります。

 

健康状態

健康状態でチェックするポイントは、

①投薬状況
骨粗しょう症
③うつ
これら3点です。特に投薬状況は、さまざまな臨床ガイドラインで転倒のリスク因子として挙げられています。向精神薬や高圧薬、心疾患薬などがリスク因子として報告されていることが多いです。また、服薬が5 剤以上(多剤投与)であることも転倒のリスク因子となります。

 

心身機能と構造

筋力、バランス能力、認知機能、神経機能、心血管機能、視力、排尿機能などを評価します。運動機能面に関しては理学療法士の得意とする評価になります。簡便に評価できるツールとしては、TUGや5回立ち上がりテストなどがあります。5回立ち上がりテストは、サルコペニアの診断基準としても使用されている評価方法です。

 

TUG

5回立ち上がりテスト

 

心血管機能に関しては、心拍やリズム、血圧、姿勢変化に伴う血圧の変化などを評価することが推奨されており、理学療法士が日々確認しなければいけない事項です。

また、視力に関しては理学療法士の専門外になるため、視力低下が疑われる場合は専門職へつなげる作業も必要です。

 

活動・参加

活動・参加面については

①歩行
②ADL
身体活動
の評価が必要です。
これらも理学療法士が専門とする評価で、歩行に関しては速度や安定性、歩行補助具使用の有無などを評価します。また、身体活動量は活動量の低下自体が転倒リスクとなります。よって、生活での活動量を把握しておくことが重要になります。
 

環境因子

環境因子に関しては、マットやラグ、床の電気コード、照明などの外的要因に注意を払うことが推奨されています。
 
外的要因に関する記事はこちら↓

 rehabilitation-nutrition.hatenablog.com

 

 個人因子

 個人因子としては、転倒恐怖心、足部と履き物の評価、アルコールの摂取などが挙げられます。履き物は

・踵部がホールドされていないものを使用している
・サイズが合っていない靴
・ヒールなど踵部が高い靴

などが転倒リスクと関連しています。

また、転倒恐怖心は転倒後や身体機能低下の結果として生じるものと思われがちですが、転倒恐怖心そのものが転倒を誘発するリスク因子となりうることにも注意が必要です。

 

最後に

今回は転倒リスクのスクリーニング、評価についてまとめました。ロジカルに評価していくことで、リスク因子をまとめていけるよう日々考えていきたいですね。

 

本日は以上です、ありがとうございました。

 

参考:高齢者理学療法