サルコペニアとは、「進行性及び全身性の骨格筋量及び骨格筋力の低下を特徴とする症候群」で「身体機能障害、QOL低下、死のリスクを伴うもの」と定義されています。
サルコペニア・フレイルの定義のおさらいはこちら↓
rehabilitation-nutrition.hatenablog.com
今回は、サルコペニア診断基準の評価方法について説明したいと思います。
サルコペニア診断基準
AWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)の診断基準は以下の通りです。
AWGSでは、握力・歩行速度の両方を必須項目とし、いずれかまたは両方が低下していれば四肢筋量を測定し、筋量低下があればサルコペニアと判断されます。
筋力の評価
筋力評価で客観的で簡易なものとして、握力評価があります。握力は下肢筋力やその他多くの部位の筋力と相関関係が高いため、全身の筋力の程度を知るための指標として用いられます。
一般的なスメドレー式握力計にて、利き手の握力を測定します。姿勢は立位で手を下垂して測定、または座位で肘を直角に曲げて測定します。
カットオフ値は男性26kg未満、女性18kg未満です。
ちなみに年代別平均値です。(平成20年度体力・運動能力検査より抜粋)
これを見ると、75歳以上でも男性約34kg、女性約22kgと、サルコペニア の基準より5〜10kgほど強い結果となっています。握力が基準以下になることは、全身筋力が相当量低下していることを示唆しています。
その他の評価方法として、主観的評価の徒手筋力テスト(Manual Muscle Test:MMT)があります。個別筋の評価として一般的であり、サルコペニアの評価としては大腿四頭筋力を一つの指標としています。
歩行速度の評価
歩行速度の測定方法には様々なものがありますが、一般的には10m歩行から計算できます。前後3mに助走路をもうけ、10m間の歩行にかかる時間を計測します。
歩行速度は、【計測距離(m) ÷ 計測時間(sec)】 で算出できます。
サルコペニアのカットオフ値は0.8m/secとなっています。
以下に年代別平均値を記載します。(阿久津邦男,歩行の科学から引用)
表示は1分間あたりの速度ですが、秒換算すると75歳以上の男性で約0.9m/sec、女性で約0.85m/secとなります。
横断歩道を渡り切れる速度として1m/sec以上とされているので、「渡りきるのがきつい」という方がいればサルコペニアに注意すべきと考えます。
他の評価方法として、Timed Up and Go Test(TUG-T)があります。これは、運動器不安定症の診断基準として使用されており、起立・歩行・バランスの複合的な評価ができます。
椅子に深く腰掛けた姿勢からスタートし、3m先の目標物で折り返し、椅子に着席するまでの時間を測定します。
サルコペニア直接の診断基準ではありませんが、歩行能力の一指標とするのに有効とされます。運動器不安定症の診断基準としては、11秒をカットオフ値となっています。
筋量の評価
筋量評価はDual Energy X-Ray Absorptiometry(DXA)法、もしくはBioelectrical impedance analysis (BIA 法)を用いての評価が推奨されており、若年の2標準偏差以下という基準がありますが、検査機器がないと評価できない、検査に費用がかかるという欠点があります。
そこで臨床では、周径を計測し推計しています。
・上腕周囲長(利き手でない上腕や麻痺のない上腕の中央で測定) 21cm以下
もしくは
・下腿周囲長(麻痺や拘縮のない下腿で最も太いところで測定)28cm以下
これらを目安としています。
その他の評価
全身持久力の評価
全身持久力の評価として、6分間歩行テストがあります。もともと呼吸器疾患や循環器疾患を対象とした持久力の評価ですが、サルコペニアの持久力評価にも使用できます。
片道20〜30mの直線コースを、自分のペースでできるだけ遠く6分間歩き,歩行距離を測定します。また、評価前後に修正Borgスケールにて呼吸困難と疲労レベルを測定し、持久力の指標とします。
SSCWDではカットオフ値を400mとしています。
以下は年代別平均値です。(平成20年度体力・運動能力検査より抜粋)
カットオフ値の400mから歩行速度を計算すると、1.1m/secとなります。
EWGSOPでは、サルコペニアの歩行速度の診断基準を1m/sec以下としており、カットオフ値が一つの目安になると考えます。
まとめ
サルコペニア診断に必要な運動機能の評価項目についてまとめました。
評価を有効活用して、リハ栄養の治療に役立てましょう。
本日は以上です、最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考・引用
http://www.ozasa-iin.jp/ozasa/c.pdf
https://www.ajinomoto.co.jp/nutricare/medical/documents/pdf/tn_topics05.pdf
リハ栄養からアプローチするサルコペニアバイブル