リハビリ何でも屋

理学療法士がリハ栄養やリハビリのことについて解説していくブログ。少しでも皆様のお力になれれば。

栄養スクリーニング『SGA』について解説します

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 リハ栄養において栄養スクリーニングは、介入を行うかどうかの判定に重要な位置を占めます。

 

今回は、栄養スクリーニングの「SGA」について解説していこうと思います。 

 

 

 

 

SGAとは

SGA(Subjective Global Assessment):主観的包括的評価と言います。

外来診察で簡単に入手可能な情報で構成されているスクリーニングツールです。血液検査などのデータを用いず、身体計測や問診だけで行うことができます。

 

SGAの特徴として

・評価の所要時間が短い

・評価に必要な医療費が少なくて済む

・医師の栄養療法の普及プロジェクトに採用(JSPEN TNTプロジェクト採用)

・熟練度が高いスタッフほど 、評価時間が短く済む

と言った特徴があります。 

 

 

SGAの評価方法

SGAは

  1. 体重減少
  2. 食事摂取の変化
  3. 消化器症状
  4. 身体機能
  5. 疾患と栄養必要量の関係
  6. 身体計測 

の6項目で構成されています。 

 

SGA 評価シート

SGA 評価シート

体重減少

体重減少は、

・6ヶ月間の合計体重減少が何kgか、減少率は何%か

・過去2週間の体重変化(増加・変化なし・減少:何kgか)

を調べます。

 

 6ヶ月間で10%以上の体重減少がある場合は重度の体重減少とし、重篤な低栄養状態の可能性があります。

また2週間の短期の体重減少も、栄養不良の可能性が高いと言えます。

 

体重は基本的に体重計で計測しますが、寝たきり患者に関しては体重計に乗せるのは容易ではないと思われます。

そのような場合は、体重予測式を用いて計測することになります。

 

体重推定式のおさらい↓

 

rehabilitation-nutrition.hatenablog.com

 

もしくは、食事摂取量を観察し通常の食事が食べられているか観察し、2週間以上摂取量が減少している場合は「体重減少あり」と考え、栄養状態の悪化を疑います。

 

体重変化率の算出方法とその評価を知っておくことも、栄養障害を判断する上で有用となります。

 

 

食事摂取の変化

食事摂取量が変化したか、変化している場合はどれぐらいの期間変化したかを聴取します。

 

栄養不足が予想される食事(流動食など)が2週間以上続いている場合、 低栄養状態を疑います。

 

また、食事形態が固形食なのか、輸液のみで絶食状態なのかについても細かく聞き取ります。

 

消化器症状

悪心、嘔吐、下痢、食欲不振等の症状の有無とその持続期間を聞き取ります。

 

2週間以上持続している場合低栄養を疑います。

 

消化器症状は高齢者になる程短期間で栄養状態に支障が出ることが多いので、 年齢も十分加味して判断します。

消化器症状がない場合でも、食事形態が1週間以上全粥や流動食である場合は、食欲不振と判断します。

 

機能状態

機能障害の有無とその期間について聞き取ります。

患者が、日常生活が自立しているか、歩ける状態か、座れる状態か、寝たきりなのかなどを速やかに評価します。

 

日常生活の自立度が低下している程、低栄養状態になりやすいとされています。

 

疾患と栄養必要量の関係

発熱や、疾患に伴う代謝受容(術後早期、悪液質などによるストレス)はどの程度かを評価します。

 

一般的にストレス係数を確認して、患者がどの状態にあるかを評価します。

 

ストレス係数は以下の記事に載せてあります。

rehabilitation-nutrition.hatenablog.com

 

一過性の発熱による場合は、数日で解熱することが多いので、解熱後に再確認が必要です。

 

 身体計測

こちらは、簡単な身体計測によって皮下脂肪・筋肉減少、浮腫・褥瘡・腹水の有無を確認します。

 

こちらはスコアによる評価で、

0=正常

1=軽度

2=中等度

3=高度

 

という評価になります。

 

皮下脂肪・筋肉は主に上腕三頭筋大腿四頭筋等で確認し、皮膚のたるみ(振袖状の上腕)などを見ます。

他に眼下脂肪体でも確認できます。栄養状態良好な人では眼下は少し膨らんでいますが、栄養不良になると凹みます。

 

また浮腫・褥瘡・腹水の有無は下腿や仙骨部、腹部で確認します。

 

判定方法

判定方法は三段階で

・栄養状態良好

・中等度の栄養不良

・高度の栄養不良

に分かれています。

6項目を総合的に判断して段階分けします。

基本的に何か1項目でも異常が見られる場合、低栄養リスクありと考えますが、血液検査などでアルブミン値3.5以上ある場合などはそのデータも加味して判断します。

 

中等度、高度の判断が難しいところではありますが、指標の例として

6ヶ月で10%の体重減少=高度の栄養不良

6ヶ月で5%の体重減少+嘔吐、下痢が多い=高度の栄養不良

6ヶ月で5%の体重減少のみ=中等度の栄養不良

褥瘡あり=高度の栄養不良

浮腫のみ=中等度の栄養不良

といった判断が用いられます。 

 

 

 

SGAを使用時の注意点

SGAを使用する際の注意点として

・主観的評価であるため、スタッフの熟練度によって評価に差が出る恐れがある

・問診、視診、身体計測を実施する時間が必要

という点です。

「栄養状態良好」と「中等度の栄養不良」、「中等度の栄養不良」と「高度な栄養不良」との境界線が曖昧な場合があるためそこの判断には経験・熟練が必要になります。

よって、使用する場合はその施設でのスタッフ教育、経験が必要不可欠であります。

また、診察時に問診や身体計測を行うことが多いので、実際に患者に触れる時間が必要であり、人手を割く時間が必要になります。

 

 

最後に

SGAについて解説しました。

非常に簡便であり、短時間ですクリーニングするのに有用だと思いますが、経験・熟練が必要なため、利用する際には主観でカットオフを見極めなければいけない点が難しいと感じます。

 

本日は以上です、最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 

参考文献

:リハ栄養からアプローチするサルコペニアバイブル

:ベッドサイド栄養管理の始め方 

 

 

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