リハ栄養という活動をするにあたり、対象となる方は概ね「低栄養」という状態となっています。
今回はまず、低栄養はどんな状態なのかを解説していこうと思います。
低栄養とは
低栄養とは、読んで字のごとく『栄養が足りていない』ということで、本来必要な栄養素が1つないし複数欠乏した状態です。
高齢者低栄養の要因として、
貧困
独居
介護不足
孤独感
臓器不全
炎症・悪性腫瘍
薬物副作用
歯科的・咀嚼の問題
摂食・嚥下障害
ADL障害
疼痛
消化管の問題(下痢・便秘)
嗅覚、味覚の障害
食欲低下(中枢神経系の関与)
食形態の問題
栄養に関する誤認識
医療者の間違った指導
などとされています。
低栄養の分類
低栄養の分類として、the Academy of Nutrition and Dietetics(AND)およびthe European Society for Clinical Nutrition and Metabolism(A.S.P.E.N.)が合同声明として公表したものによると、
- 急性疾患または外傷の文脈における低栄養(acute disease or injury related malnutrition)
:急性で強い炎症によって生じるもの
- 慢性疾患の文脈における低栄養(chronic disease related malnutrition)
:軽度から中等度の持続的炎症により生じるもの
-
社会生活環境の文脈における低栄養(starvation related malnutrition)
:炎症反応が存在せず、栄養摂取不足によって生じるもの
の3タイプに分類されます。
低栄養の判断基準
上記の合同声明で成人低栄養の臨床的特徴を示しており、
1)エネルギー摂取量減少
2)体重減少(通常時からの減少率)
3)体脂肪減少
4)筋量減少
5)水分貯留(末梢浮腫、腹水等)
6)握力低下
これらのうち、いずれか2項目以上が該当すれば低栄養と判断するとされています。
また、欧州臨床栄養代謝学会(the European Society for Clinical Nutrition and Metabolism:E.S.P.E.N)は、低栄養の診断的定義(Diagnostic criteria)を提唱しており、
妥当性が検証された栄養スクリーニングツール(NRS2002、MUST、MNA、SGA等)を用いて栄養リスクを判断し、かつ
BMIが18.5kg/㎡未満
もしくは
①体重減少>5%/3ヶ月、または期間によらず>10%
②BMI<20kg/㎡(70歳未満)、または<22kg/㎡(70歳以上)
③Fatty free mass index(FFMI)<15kg/㎡(女性)、または<17kg/㎡
このうち①と②、または①と③を両方満たす場合に、低栄養と診断することを推奨しています。
低栄養の症状
低栄養により伴う病態として、
1)免疫異常(感染症)
2)褥瘡
3)創傷治癒の遅延(手術後の回復遅延)
4)貧血
5)認知機能低下
6)骨粗鬆症
7)薬剤代謝の変動→薬剤有害現象
8)筋萎縮(サルコペニア)
9)フレイル
10)転倒
11)骨折
12)呼吸機能の低下
13)疲労感
これらが挙げられます。
低栄養状態が悪化すると、サルコペニアはさらに悪化し、転倒・骨折リスクが高くなります。また、嚥下機能低下による誤嚥性肺炎や窒息のリスクも増加し、要介護状態となるリスクも高まります。
また、高齢者では急性疾患により起こる劇的な低栄養以外に、徐々に食事摂取量が減り低栄養に陥るケースも少なくなく、注意が必要です。味覚や嗅覚の変化により、食事内容も変化していくことに注意しなければなりません。
まとめ
今回は低栄養についての基本的な部分についてまとめました。
リハ栄養を実施していく方々の参考になれば幸いです。
では、最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考・引用
リハ栄養からアプローチするサルコペニアバイブル
低栄養とリハビリテーション栄養管理の考え方 -特にエネルギー必要量に関して-
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/31/4/31_944/_pdf