医療職種が防がなければならない「医原性サルコペニア」とは?解説します。
サルコペニアは、進行性、全身性に認める筋肉量減少と筋力低下であり、身体機能障害、QOL低下、死の危険性があると定義されています。(EWGSOPより)
サルコペニアには、加齢のみが原因の原発性サルコペニア、活動・栄養・疾患が原因となる二次性サルコペニアに分かれます。
今回はそのサルコペニアの中でも、医療従事者が招く危険性のある『医原性サルコペニア』について解説していこうと思います。
医原性サルコペニアとは
医原性サルコペニアは、
があります。
つまり二次性サルコペニア全てにおいて、
『不適切な対応を行った結果の医原性サルコペニアである』
となる可能性があります。
※医原性疾患とは・・・
医薬品の投与、診断および治療手技によって起こる、医療側が作り出す疾患のことです。
疾患は様々であり、各臓器不全、炎症性疾患、悪性疾患、内分泌疾患、侵襲に伴い、サルコペニアが引き起こされます。
医原性サルコペニアが起こる原因
メディカルスタッフの栄養療法の知識不足
医師を含む多くのメディカルスタッフは、卒前教育として栄養療法を体系的に学ぶ機会が少ないと言われています。
実際、僕の周りのリハスタッフに関しても、栄養管理のためのエネルギーの計算方法や、各疾患に対する栄養療法の知識はほぼありません。僕自身も以前はそうでした。
このように各スタッフが十分に栄養の知識が無い状態で、医療のことにばかりに目を向け、栄養の持つ「身体を作る、活動に欠かせない」といった特性を忘れてしまっています。
そしてこのような時に、医原性サルコペニアは容易に引き起こされます。
他職種連携のシステムがまだ充分ではない
サルコペニア、低栄養状態を改善するためには、単独の職種で介入するには限界があり、他職種連携チームによる包括的な介入が必要です。
その代表としてNST(nutrition support team)やリハ栄養がありますが、日本ではどれぐらいの施設が導入しているでしょうか?
平成25年のNST認定施設数を調べた国内調査で、国内の病院数8558施設に対して、日本静脈経腸栄養学会は1864、日本栄養療法推進協議会は989の施設が登録されています。(一部重複しています)
こう見ると、NST導入施設は全体の約33%にとどまっており、まだまだ多くの施設が導入に至っていないのが現状のようです。
最後に
我々医療スタッフは、医原性サルコペニアを起こしてはいけません。
そのためには、今後より一層多職種連携を強化して情報共有を密にし、今行っているリハビリや栄養管理が適切なのかを、定期的にそのチームで協議、再考することが重要だと考えます。
本日は以上です、最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考文献
:リハ栄養からアプローチするサルコペニアバイブル