リハビリ何でも屋

理学療法士がリハ栄養やリハビリのことについて解説していくブログ。少しでも皆様のお力になれれば。

老年症候群の予防の重要性について

老年症候群は、「高齢者に多い、特有な治療あるいはケアが必要な症状の総称」で、フレイルを背景とするさまざまな有害事象のことを指します。

 

老年症候群の過去記事はこちら↓ 

rehabilitation-nutrition.hatenablog.com

 

 

要介護状態を引き起こす原因に影響することから、理学療法士は老年症候群を予防する視点を持って介入していくことが望まれます。

今回は、なぜ老年症候群の予防が重要なのかについて、まとめていきたいと思います。

 

 

 

健康寿命と平均寿命

医療従事者であれば一度は聞いたことのある言葉だと思います。これらは

 

◆平均寿命◆ 0歳の平均余命。年齢別の推計人口と死亡率のデータを使い、各年齢ごとに死亡率を割り出している。このデータを基にして平均的に何歳までに寿命を迎えるかを計算している。 Wikipediaより
健康寿命 平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態にある期間を差し引いた期間のことを指す。

 

このように定義されています。

高齢者が健康に生活している期間が健康寿命なので、我々リハビリ職はこの健康寿命を延伸できるよう介入を行っていくことが求められます。

 

では、現在の日本の健康寿命・平均寿命はどうなっているのでしょうか。

内閣府の、2 健康・福祉|平成30年版高齢社会白書(概要版)によると、平成28年時点の平均寿命と健康寿命の差は男性で約8年、女性で約12年となっています。

 

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健康寿命と平均寿命の差( 平成30年版高齢社会白書(概要版)から引用)

 

健康寿命は延伸してきているものの、上記の期間は何らかの支援が必要な状態であることになります。

 

要介護原因と死亡原因

では介護が必要になった原因と、その後の死亡原因は同じなのかというと、統計的にはそうではありません。

 

介護が必要になった原因

国民生活基礎調査より作図

高齢者の介護が必要になった主な原因は、認知症が1位、次いで脳血管疾患、高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患と続きます。

 

65歳以上の死亡原因

人口動態調査より作図

一方、65歳以上の高齢者の死亡原因は、1位が悪性新生物、次いで心疾患、肺炎、脳血管疾患と、介護原因が直接的に死亡原因に繋がっているとは言い難い結果です。

 

年代別に見た介護が必要となった原因

年代別に見た介護が必要となった要因

国民生活基礎調査より作図

介護が必要となった原因を年代別に見てみるとこのようになります。これをみると、前期高齢者ではの血管障害の割合が多かったのに対し、後期高齢者以降は骨折・転倒や高齢による衰弱の割合が増えているのが分かります。

 

まとめ

これらのことから、高齢者が健康に長生きするためには、生活習慣病の早期発見や治療はもとより、老年症候群やフレイルの予防・対応も必須であります。

 

理学療法士は老年症候群を予防するために、運動の専門家として地域での介護予防教室や啓発活動を、今後も継続して行う必要があります。理学療法士一人一人がこの老年症候群のリスクを見定めて、介入していきたいですね。

 

本日は以上です、ありがとうございました。

 

 

 

参考:高齢者理学療法