老年症候群とは?特徴と分類について
「老年症候群」というものを聞いたことはありますか?
近年ではこの考え方がメジャーになりつつあります。しかしなかなか抽象的な名前で、どういったもののことを言うのかは名前からイメージがつきにくいですよね。
ということで今回は、老年症候群とは何か、特徴、分類などをまとめていきたいと思います。
老年症候群とは
老年症候群(geriatric syndrome)とは一般的に
と理解されています。加齢に伴う様々な要因が関与することによって、自覚的あるいは他覚的に高齢者が呈する、治療と同時に介護・ケアが重要となる一連の症状・初見のことを指します。
いわば老年症候群は、フレイルを背景としてみられる高齢者の特徴です。 フレイルは身体機能を維持するためのエネルギー予備能が欠乏した状態です。そこから生じる様々な「現象」が老年症候群となるわけです。老年症候群をそのままにしておくとADL能力低下や寝たきりに直接繋がります。
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「現象」で例えてみると、よく起こるのが転倒です。
高齢者が1年間に転倒するリスクは30%程度と言われていますが、転倒には脳血管障害、歩行の不安定性、めまいなどさまざまな原因が関与しています。
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リハビリをする上では、こういった原因ひとつひとつに対応していくイメージが強いですよね。
しかしながら、老年症候群に対するアプローチは、「原因」は何かを問わず、「現象」に対してアプローチする視点が重要と言われています。対象者が高齢であること、複数の基礎疾患を持ち合わせていること、ADL低下にすぐ結びついてしまうことなどから、原因を突き詰めるよりも現象に対処・予防してADL維持やQOL向上を目指す視点が必要とされるのです。
老年症候群の特徴をまとめると、
・慢性的な経過をたどること
・高齢者の自立を著しく阻害すること
・簡単には治療、対処法が見出せないこと
老年症候群の分類
老年医学では、老年症候群はそれらの症状が顕在化する時期によって大きく3つに分類されています。
これらは、年齢が増すごとに保有する症候の数が増加していく傾向があり、70歳代では平均6個、85歳以上では平均8個の症状を持っていると言われています。
また、症候の保有数とADL(BI)との関連も報告されており、自立度が低下した症例では自立群の約2倍の老年症候群を有していると言われています。
これらのことから、自宅復帰を目指す上で老年症候群は阻害因子であり、それらを予防していくことが復帰を促す一歩になるのではないかと考えます。
最後に
今回は老年症候群とは何か、特徴と分類についてをまとめました。老年症候群は臨床で避けては通れない症候群ですが、その現象に対処するという視点を忘れず、アプローチを考えていきましょう。
本日は以上です、ありがとうございました。
参考:高齢者理学療法学