リハビリ何でも屋

理学療法士がリハ栄養やリハビリのことについて解説していくブログ。少しでも皆様のお力になれれば。

食事を理論で語ってはいけない

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栄養管理の為に私たち治療者が考えるバランスの良い食事。

 

できれば全量摂取して欲しいですよね。しかし実際の患者さんはそんなに食べられなかったり 、逆に偏って食べ過ぎていたり・・。

 

今回はこのような、治療者と患者との食事に関するズレの部分をお話ししたいと思います。 

 

 

 

「食べて!!」と言われて患者さんはどう思うか?

 例えば、

 

「体重を増やさないといけないから絶対食べてくださいね!」

 

「ダメですよ!しっかり食べないと!」

 

 

 こんな風にきつく言われて、あなたは食事を変えることができますか?

 

 私たち治療者は、対象患者を評価し、目標を定めて、エビデンスに基づいて栄養投与量を設定します。

 

・エネルギー摂取量を300kcal/日ずつ増やす為に、脂質を少なく、タンパク質多めの栄養素で。食事量自体も200gぐらい増やそう。

 

など。こういった目標のもとに、患者さんの状態を良くする為に献立を決めますよね。

 

しかしこれはあくまで理論的な面の話です。

 

・もしその患者さんが、そもそも今までの食事量でお腹いっぱいだったら?

・嫌いなものばっかりの献立だったら?

・大好物なものを食べるなと言われたら?

 

この状態で上記のように、食べろ食べろと言われた場合、

 

「無理やり食べさせられる・・・」

「嫌いなものばかり食べろと言われる・・・」

「大好物なものを食べるなと言われた・・・」

 

と、ネガティブな感情になりがちです。食欲も湧きませんよね・・。

 

こういったところに、治療者と患者の「ズレ」が生じます。

 

 

「食べて」を守らない(守れない)理由

前述のように、患者さんにただただ食事摂取を押し付けるだけでは、うまく食事量を増やすのは難しいところがあります。

そしてそこには、患者さんが「食べて」を守らない(守れない)理由があるということを理解し、対処していかなければなりません。

 

物理的に食べられない

「そもそも今まで食べてきた量でお腹いっぱいなんです。それ以上に食べろと言われても・・・。」

 

そりゃ食べられないですよね。

 

こういった人の場合は、全体のエネルギー摂取量を増加して、かつ食事量は変えずに済むような高栄養・高カロリーのものを一品足すなどの工夫が必要ですね。

 

精神的なストレス

「食べろ」と散々言われる。食べられなかった時は責められる。早く食べろと急かされる。etc...

 

このような圧力で精神的に参ってしまって、食べられないという人もいます。

また、食べなきゃいけないのに食べられず、自分を責めてしまう人もいると思います。

 

食欲は精神面に大きく左右されます。

こういった環境要因を考え、取り除いてあげることで食べられるようになる人が結構います。

対処法は多種多様と思いますが、まずはしっかりと患者さんの話を聞いてあげることが、精神的な栄養管理に繋がると思います。

 

食の趣向の相違(嫌いなものは食べたくない)

大好物を止められて嫌いなものを増やされる 、といったことでも食欲は低下しますよね。

そもそも嫌いなものは食べたくないです。

このタイプの人は、大体の食の偏りが見られることが多いです。(お菓子など)

かといって、好きなものを0にしてしまうと食欲も落ちてしまうので、

 

可能な範囲で減らす & その分他の栄養素をプラス

 

 というスタンスが現実的だと思います。「食の生きがい」を失わない程度でのアプローチが必要ですね。

 

他疾患の問題

他疾患や、その治療による食欲の減退が理由の場合は、その疾患との兼ね合いが一番重要になります。

 まずはその疾患の改善を邪魔しないように食内容を考え、同時にメンタルケアなども行い、疾患の改善に伴って食事量も見直すというようなアプローチが必要です。

 

多職種での包括的なアプローチが重要となり、リハ栄養の腕の見せ所でもあります。

 

 

治療者が患者の気持ちを理解するには?

前述のような患者さんの気持ちを理解する一番の方法として 、「治療者が治療のリアリティを実際に感じる」ということです。

 

例えば、

・普段あなたがお腹いっぱいと感じる食事量に、プラス300kcalしてみる。

・大好物を一切食べない生活を続けてみる。

・嫌いなものばかり食べる生活を続けてみる。

 

などなど。

あなたが患者さんに処方しているような食事を、あなた自身も体験してみることで治療のリアリティを感じることができます。

 

そういった体験があると、患者さんの大変さを理解できて、冒頭のような心ない言葉は出てこなくなると思います。

 

 

最後に

「食事」というのは、ただ栄養摂取を目的とするだけでなく、趣味、趣向、お腹が満たされる満足感、社会関係、人間関係、生活リズムなど、様々なものが複合的に関係し、それらが欠けることが食欲低下にも繋がります。

 

治療者はそれを理解して、食事を押し付けるのではなく、生活の生きがいとして機能させながら栄養管理ができれば理想的だと思います。

 

本日は以上です、最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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