リハ栄養「rehabilitation-nutrition」な日々

理学療法士がリハ栄養やリハビリのことについて解説していくブログ。少しでも皆様のお力になれれば。

栄養状態とリハ目標の考え方、リハ目標切り替えのタイミングについて解説します

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リハ栄養の目的の一つとして、『適切な栄養管理とリハビリを実施し、栄養状態、サルコペニア・フレイルを改善すること』が挙げられます。しかし、

 

・栄養状態とリハ目標の考え方は?

・リハ目標を切り替えるタイミングは?

 

 と疑問に思う人もいらっしゃるかと思います。

 

今回は患者様の栄養状態から運動負荷量をどのように考えるか、また栄養状態改善の指標と運動強度切り替えのタイミングについて書いて行こうと思います。

 

 

 

 

低栄養状態はどんな状態?

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 まず低栄養状態になるとどうなるのかという点ですが、簡潔に言えばエネルギーが不足して筋肉、脂肪とも痩せていく状態となります。

一般成人であれば、食事で十分に摂取したエネルギー(主に糖質)により、体を動かす際にそのエネルギーを利用して動くことができます。体内では主に、筋肉や肝臓に常時200〜300gの糖質(グリコーゲン)を貯蔵しており、カロリー数に換算すると800〜1200kcalのエネルギー量になります(糖質1g=4kcal)。

このカロリー数は数時間〜半日体を動かすのに必要な量と言われています。このように成人であれば、適度に糖質を補給しつつエネルギーを燃出して体を動かすことができます。

 

しかしこれが低栄養の場合、エネルギー摂取量が少ないため、体内に貯蔵する糖質量が極端に少なく、体を動かす際に必要なエネルギーが不足した状態になります。

そして体を動かすために他の栄養素を使って代替えエネルギーを作り出します。代わりに使用する栄養素が「脂質」と「たんぱく質」になります。脂質は皮下脂肪や内臓脂肪、たんぱく質は筋肉を分解することで燃出するため、結果として脂肪、筋肉ともやせ細ってしまいサルコペニア(筋肉減少症)の状態になります。

 

 

栄養状態と運動負荷量設定の考え方

栄養状態が正常で栄養管理も適切であれば、運動負荷量は機能改善を目的とした、機能改善を目標とした高負荷のレジスタンストレーニングを実施できます。

しかし栄養状態が悪い場合、もしくは栄養管理が不十分な場合は、高負荷な運動は筋肉内のタンパク質を分解し、筋肉量は逆に少なくなってしまうため禁忌となり、機能維持を目的とした低負荷のトレーニングにする必要があります。

 

リハ栄養ではこの栄養状態と栄養管理に合わせて、目標を機能改善・機能維持に切り替えることが重要です。

 

 

栄養状態と目標設定

 現在の栄養状態と栄養管理が適切か不適切かによって目標を設定します。一覧表になっているものが以下のものです。

 

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先ほども申しましたように、現在の栄養状態が正常であっても、栄養管理が不適切であれば今後栄養状態は悪化してくことが見込まれるため、栄養管理の改善を優先しエネルギー消費の高い運動は禁忌とします。

 

また、手術後の異化亢進期や悪液質(癌、慢性臓器不全等)が著名で重度の栄養障害がある場合では、原疾患の治療を最優先し、機能維持または機能悪化の軽減を目的としたリハ栄養管理を行います。

 

逆に重度の栄養障害であっても、栄養管理が適切で改善中であれば、目標を機能改善にシフトしていくことも可能です。この際、レジスタンストレーニングは本人に過負荷にならないようマイルドに進めていくことに注意します。また持久力トレーニングに関しては、エネルギー消費量が増加し栄養改善を阻害する可能性があるので、まだこの時期では行わないようにします。

 

栄養状態が軽度または中等度の場合、栄養管理が適切であれば、適切なトレーニングによって機能改善が見込まれます。

 

 

 

 

運動負荷量を切り替えるタイミング

ではどのような指標を目安として機能改善⇔機能維持を切り替えるのかを考えていきたいと思います。

通常であれば筋肉量の評価はBIAやDXAなどを用いて検査することが推奨されていますが、検査コストがかかるのと簡便ではないことから、今回は臨床で簡単な目安となりうる判断材料を考えていこうと思います。

 

栄養指標による切り替えの目安

リハ栄養における栄養指標の具体的な数値基準は、今の所ありません。

アルブミン値に関しては、肝臓でつくられるたんぱく質で、栄養状態把握の血液検査として利用されています。

アルブミン3g /dl以上、BMI18.5以上であれば栄養改善と筋力や持久力向上を目標とした積極的なリハの併用で、機能が改善しやすいという仮説があります。以下はそれらの数値からのリハ栄養目標の指標です。

 

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しかし、血液検査は脱水や稀釈、合成や異化、摂取や漏出などによっても変動します。血液検査の情報だけで判断せず身体状況・病態・以前からの栄養状態の推移も考慮に入れて判断しなければなりません。

 

身体計測による切り替えの目安

身体計測による指標を以下に記します。

 

・体重

:浮腫・胸水・腹水では水分貯留により実際より重たくなる、脱水では実際より低くなるなど病態による増減に注意。病態による影響を排除した上で体重が増加していれば、栄養改善の目安となります。

 

・体重変化率

:(UBW−BW)/ UBW×100で計算できます。(*UBW:健康な時の体重  BW:現在の体重)

体重変化率は栄養障害の予後予測をするのに重要で、体重の増加率も見ることができるため重要です。具体的な数値に関してはエビデンスはないのですが、減少率の指標となる%に合わせた増加率を指標とするのが良いのではないかと考えています。

順調に増加していれば機能改善へ切り替えていっても良いかと思います。

 

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周径(骨格筋量、皮下脂肪量)

体組成の増減を評価するのに有用であり、CC(下腿周囲長)は体格指数(BMI)や除脂肪体重、AMC(上腕筋囲)と相関があるとされています。またAMCとAMA(上腕筋面積)は共に全身の骨格筋量の目安となります。

リハ栄養スクリーニングとして上腕周囲長21cm以下、下腿周囲長31cm以下をアセスメント対象のカットオフ値としているので、このカットオフ値を切り替えの判断材料として用いてもいいかと思います。

 

 

最後に

 

リハ栄養の目標を切り替えるタイミングについて考えました。上記のような身体的な指標、血液データなどを参考に、総合的に判断して切り替えを行うべきだと考えます。ただ今回は自分の私見が多数含まれているので、あくまで参考程度にお考えください。

 

 

本日は以上です、最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

参考文献

:リハ栄養からアプローチするサルコペニアバイブル

 

 

リハビリテーション栄養ハンドブック

 

 

:PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養ー栄養ケアがリハを変える