リハビリ何でも屋

理学療法士がリハ栄養やリハビリのことについて解説していくブログ。少しでも皆様のお力になれれば。

リハに栄養は必須!食欲がない人に対する工夫とは?解説します

 

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リハ栄養において、適切な栄養管理と運動療法は必要不可欠なところですが、厚生労働省の報告書によれば、回復期リハビリテーション病棟における経口摂取可能な患者の食事摂取率において、入院患者の1/4が提供された食事量を十分に摂取できていないという結果でありました。

 

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この結果は、他の病期における病院・施設に関しても言えることだと思います。

 適切な栄養を提供していても、摂取してもらえなければ十分に効果は出ません。

今回は、入院患者の方が食欲がないときにリハスタッフが考慮してみる点を考えてみました。

 

 

 

食欲が低下する原因

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高齢者の方の食欲が低下する要因として、

・味覚、嗅覚の低下

・胃腸の飽食作用の変化

・ホルモン分泌量の低下

うつ病認知症神経性食思不振症などの精神疾患

・ガンや慢性胃炎胃潰瘍などの身体的な疾患

・ストレス等による自律神経のバランス低下

・不規則な生活習慣

・運動機能の障害(手が動かせない、座位が保てないなど)

・咀嚼、嚥下機能の低下

・趣向の問題(嫌いな食べ物、彩りが悪いなど)

・食事の姿勢が悪い

 

などなど、多岐にわたります。これらの要因が一つないし複数重なって、食欲の低下を引き起こしているのだと考えます。

 

この中で療法士がリハビリ以外で関われる分野としては、

・食前の準備

・食事中のポジショニング

・食事の促し方

 

これらを工夫することができると思います。

順番に説明していきます。

 

食欲がない人に対する工夫

 

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食前の準備

排泄を済ませる

途中でトイレに行くとなると、一旦食事を中断しなければならず、またポータブルトイレを使用する場合、部屋の中に排泄物のニオイが残り、それ以上食事が進まなくなる可能性もあります。食事前のリハではトイレへの誘導を行うなど、排泄を済ませるように促します。

また、ポータブルトイレに排泄した場合はニオイの対策まで済ませて、気持ち良く食事を始められるように環境設定しましょう。

 

食事しやすい環境を整える

テレビなどがついていると、ついそちらが気になり、食事に集中できない可能性が高まるので、食事を始める前にテレビは消しておきます。あまりにも部屋が静かな状態の場合、緊張してしまう可能性がありますので、ゆったりとした音楽をかけ、リラックスできる環境をつくるのも効果的です。

 

口の中を清潔にする

食事の直前に、うがいや歯磨きなどをして口の中を清潔にすることで、口腔内に残った汚れを誤嚥するリスクが下がります。また、食前に口の中をきれいにし、舌苔なども取り除いておくことで、味を感じやすくなるだけでなく、唾液の分泌が活性化し、食べ物を飲み込みやすくなります。

 

 

 

唾液の分泌を促すトレーニングをする

食べ物をのどに詰まらせたり、むせたりする回数が多くなると、食事に対して苦手意識を持つ可能性があります。ものを食べる前に嚥下体操や口腔体操などを行い、スムーズに食べられるように促します。

 

 

 

食事中のポジショニング

食事摂取する際に重要になるポジショニング。

結論から言いますと、可能な限り安定した座位姿勢に近づける方が食べやすいということです。

座って食べられるなら椅子座位、ベッド上で食べるならできるだけリクライニングするなどです。

姿勢をきれいに保ち食事をすることで、味覚・嗅覚にも変化が起こる可能性があります。

 

姿勢と味覚に関する情報はこちら↓

tatatatamimimi.hatenablog.com

 

また食べ物を口に運びやすく、飲み込みやすくもなり、食欲向上につながります。

椅子座位で食べられる場合

こちらの記事を参考にしました↓

http://www.wam.go.jp/content/wamnet/sppub/top/column/kaigogijyutu/kaigogijyutu010.html

椅子座位で食べられる場合は、椅子の座り方に注意します。

 

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手で箸や皿を持ったり、顔をテーブルに近づけたりする時に、重心を前方に移動させることになります。このとき、重心が支持基底面の前方に移動するため、腹筋・背筋に加えて足の踏ん張る力が必要になります。

力を入れやすくするためには、

・足をしっかりと地面につけた状態に設定します。

・車椅子座位の場合、フットレストから足をおろして地面に着くように設定します。

・車椅子座位の場合、座面前方が高くなっている物があるので、座面後方にクッションを敷いたり、後方タイヤ下台を敷いたりして座面を並行にします。

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また、疾患によっては体幹が左右に傾斜することもあるので、できるだけ正中位を保つためにクッションを敷き込むなどして対応します。

 

ベッド上で食べる場合

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ベッド上で食べる場合は、体幹の安定性を考慮しつつ45〜80°程度リクライニングします。

腰はベッドのリクライニング部分にしっかりと沿い、隙間ができないように座らせます。膝は軽く曲げられるようにして、その下にクッションなどを挟んであげると姿勢が楽になります。

また、体幹や首を安定させるために、体側や後頭部などにクッションなどを敷き込み大きく崩れないようにします。

 

このようなポジショニングの工夫を行い、食べやすい環境を作ることで食べる意欲に繋がることがあります。

 

 

食事の促し方

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食べるのが遅いなどの理由から、急かすような声かけをしたり、無理やり口に食べ物を持って行くなど、対応が悪いと当然食欲も低下します。

人にはそれぞれ自分のペースがあります。無理に強要せず、確実に食べられるように優しく声かけすることが大事です。

また、その日の気分によりどうしても食欲が出ない時もあります。そんな時は3食のタイミングにこだわらず、食欲が湧いたときにすぐ食べられるところに食べ物をセッティングしてあげるなどの気配りも必要です。

 

まとめ

食欲がない人に対する工夫をまとめました。基本的な食前の促しやポジショニングなど、療法士が関われる部分は多くあります。他職種と連携して、個々人に合わせた介入方法を考えて行くのが望ましいと考えます。

 

本日は以上です、最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

参考・引用

リハ栄養からアプローチするサルコペニアバイブル