サルコペニアは加齢に伴う骨格筋量および筋力低下の両者を兼ね備える疾病です。
これまでのおさらい↓
rehabilitation-nutrition.hatenablog.com
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これらから、ADL能力・健康寿命の維持には対応必須の病態と言えます。
しかし、
そもそも加齢によって筋力は衰えるじゃないか!
全部サルコペニアというのか?
そうではありません。
今回は、 加齢による筋力低下とサルコペニアによる筋力低下の違いについて解説します。
そもそも加齢に伴い、筋力は低下するもの
筋力は、若年期(生まれてから20歳まで)のうちに成長しピークを迎えた後。壮年期で徐々に衰え始め、高齢期になると衰えが加速します。
中でも下肢筋力の低下は著しく、60歳の大腿四頭筋力は25歳時の60%まで低下すると言われています。
また、筋繊維のタイプは遅筋(Type1線維)と速筋(Type2線維)の2種類あり、加齢に伴い速筋が減少し、遅筋の割合が増加することも知られています。この筋線維の割合が変化することにより、高パワーを発揮できる筋量が減少し、筋力低下がおこると考えられています。
さらに筋質についても変化が起こります。加齢に伴って筋線維(細胞)が萎縮すると、そこに隙間(細胞間隙)が生まれます。そこに骨格筋内脂肪(いわゆる筋内脂肪)などが浸潤し蓄積することにより、さらに筋肉の質が低下すると言われています。
このように体は、加齢に伴い筋質・筋力ともに低下するようにできています。
サルコペニアは、筋量・筋力の変化が著しい
サルコペニア の生涯モデルと個人差
引用:リハ栄養からアプローチするサルコペニア バイブル
では一般的な老化現象とサルコペニアとの差は何かというと、筋量・筋力の低下が著しいという点です。
もちろんこれは加齢による変化だけでは片付けられない話で、低栄養・他疾患・活動低下などの要因が一つないし複数混ざって起きた結果です。
上のグラフを見てもらえれば分かるように、壮年期から筋量・筋力は衰え始めますが、人により個人差があります。
その個人差を生む要因として、
【食生活】
:過食・偏食=生活習慣病、内臓疾患などにつながる。
:拒食・過度なダイエット=低栄養につながる。
【運動】
:不足=生活習慣病、不活発による筋力低下につながる。
:過度な運動=老後に体を痛め、不活発につながる。
などが挙げられます。
これらの積み重ねによって、少しずつ筋量・筋力の借金が重なり、高齢期においては大きな差となって出てきます。
この生まれた差によって、身体機能に障害が見られ、ADLに支障を来すものがサルコペニアの状態だと言えます。
最後に:予防には早期からの介入が不可欠
前述のように、壮年期からの借金がかさむについれて、将来のサルコペニアのリスクが高まります。
予防するには、本人が比較的早い段階で気づき、対処するのが一番です。
「早期から食事改善」「早期から適切な運動処方」ができれば、これからの健康寿命をさらに伸ばすことができると思います。
そのためにも、若・中年層をターゲットとした普及活動を積極的に、メディアには報じてもらいたいものです。
本日は以上です、最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考文献
:リハ栄養からアプローチするサルコペニアバイブル